こんばんは、猫田です。
最近流行りのお酒…ジン。
ジンは、ジュニパーベリーを主体とするボタニカルで香りづけをしたスピリッツです。
ボタニカルは広く「植物」を指します。
クラフトジンのブームもあり、今や世界中で様々なジンが製造されています。
その際に、独自性を出すためにこれまで以上に多くの種類のボタニカルが香りづけに使用されるようになってきています。
一方でジンのボタニカルは種類が多いわりにグループ分けされることが少なく、非常に分かりづらいのも事実…
そこでこの記事では、独自に以下のグループ分けを行い、全18種類のボタニカルを紹介します。
・メインのボタニカル
・薬草・香草系ボタニカル
・スパイス系ボタニカル
・シトラス系ボタニカル
また、各ボタニカルがジンの香りづけにどの程度の頻度で使用されるのか、定番度を☆を用いて5段階で評価しています。(こちらも猫田の主観であることはご了承ください)
こちらの記事を読むことで…
・ジンの購入前にどのような香味なのか想像する手がかりになります。
・ジンを飲む際にどのボタニカルの香味なのかを探す楽しみ方ができるようになります。
■筆者「猫田」について
・某ビール会社で生産管理の業務に携わっていました。
・趣味はお酒を飲むこと、バー巡り、カクテルづくり。
・特に好きなお酒はジンです。
・お酒の情報に特化したブログ「猫田の酒ブログ」を運営しています。
それでは、早速解説します!
ボタニカルによる香りづけ方法
ジンのボタニカルによる香りづけの方法は、大きく「浸漬法」と「バスケット法」の2種類があります。
浸漬法(スティーピング方式)
グレーン・スピリッツにボタニカルを直接漬け込むことで香味をつけて、そののちに再蒸留する方法です。
ボタニカルを直接漬け込むため、ボタニカルの風味が強く出やすいのが特徴です。
バスケット法(ヴェイパーインフュージョン法)
蒸留の際にアルコールを含む蒸気が、ボタニカルが入った「バスケット」を通ることで香味をつける方法です。
浸漬法と比べ、軽やかな風味が特徴的です。
メインのボタニカル
ジュニパーベリー
定番度:★★★★★
ジンに必要不可欠なボタニカル。
ジュニパーベリーの香りが主体であることがジンの条件の一つになっています。
セイヨウネズ(学名はJuniperus communis)と呼ばれる、ヒノキ科百審属の低木の針葉樹から採れる実をジュニパーベリーと呼びます。
セイヨウネズは北半球の冷涼な地域に広く分布する植物です。
小さく濃い紫色の実をつけ、それがジュニパーベリーと呼ばれます。
「ジン」という名前は、ネズを表すフランス語genévrier (ジュネヴリエ)、セイヨウネズを表すgenièvre (ジュニエーヴル)に由来します。
ジン特有の香りをつくり出し、「松の実のような」「ウッディな」香りと称されます。
香りを嗅いでみると見ると、まさにジンと言える香りを感じます。
※見た目は似ているもののベリー類との関連はありません。
セイヨウネズ自体は園芸用に使用され、ジュニパーベリーはジンの他には、肉やソースなどの香りづけにも使用されます。
薬草・香草系ボタニカル
薬草系・香草系のボタニカルを紹介します。
独特な香りをつけたり甘味をつけたりするほか、ジン全体のバランスをとる役割を果たす目的で使用されることも多くなっています。
アンジェリカルート・アンジェリカシード
定番度:★★★★☆
アンジェリカは古くから薬用・食用のハーブとして用いられるセリ科の植物です。
別名「セイヨウトウキ」、学名は「Angelica archangelica」。
野生のアンジェリカは「Angelica sylvestris」という学名です。
ハーブティーとしても人気があります。
ジンのボタニカルとしては、根(ルート)を使用することが多く、ジンのドライな味わいに寄与します。また、アンジェリカの芳香がジュニパーや他のボタニカルの香りを引き立たせる役割を果たすとされています。
一方、種子(シード)を使用することもあり、ビールの原料であるホップにも似た爽やかな香り、フローラルな香りがすることが特徴です。
オリスルート
定番度:★★★☆☆
アヤメ科の植物、学名はIris Germanica。
地下茎を乾燥させたオリスルートを粉状にして使用されます。
スミレのようなフローラルな香り、ウッディな香りが特徴。
ジンのボタニカルとしては、他のボタニカルとの香りとバランスをとる役割で使用されることが多くなっています。
また、他のボタニカルと比べ価格が高いボタニカルと言われています。
リコリス
定番度:★★★☆☆
学名をglycyrrhiza glabraというマメ科植物。
漢方薬としても有名で「甘草」とも呼ばれる植物です。
草丈は1mほどで初夏に薄紫色の花をつけます。
リコリスは多くの場合、その根を粉状にして使用されます。
ショ糖の150倍の甘さがあるといわれる天然の甘味成分グリチルリチンを含むことが特徴です。
ジンの製造においては、やはりその甘味が重要で、口当たりの柔らかさなどにも寄与しています。また、ウッディな爽やかな香りもあります。
※ヒガンバナ属のリコリスとは全くの別物であり、ヒガンバナの球根は毒を持っていますので注意してください。
カモミール
定番度:★★☆☆☆
カモミールはキク科の一年草であり、Matricatia属や、Chamaemelum属、Cladanthus属など数属に分かれています。
薬草として使用される他、カモミールティーとして人気がある植物です。
ジン製造においても、リンゴのような甘い香りを付与します。
使用頻度はそこまで高くないものの、タンカレーNo.10に使用されていることで有名です。
エルダーフラワー
定番度:★★☆☆☆
セイヨウニワトコ(学名:Sambucus nigra)と呼ばれる、レンプクソウ科の植物。
ヨーロッパや北アメリカ、南西アジアで自生するハーブの一種です。
低木の植物で、春先に咲く白い花がエルダーフラワー。
主に薬のほか、ハーブティーやシロップの原料としても使用されます。
夏らしい爽やかな香り、フルーティーかつフローラルな香りが特徴で、少量の使用でも主張は強め。
キャラウェイ
定番度:★☆☆☆☆
和名はヒメウイキョウ、学名をCarum carviというセリ科植物です。
草丈は30-60cm程度の草本であり、その三日月型の小さな種子が香辛料として使用されます。
種子であるキャラウェイシードは、清涼感のある甘い香りとほろ苦い味、ぷちぷちとした触感が特徴です。
ヨーロッパでは一般的なハーブであり、肉料理やチーズ料理、パン、焼き菓子などに使用されます。
タイム
定番度:★☆☆☆☆
シソ科イブキジャコウソウ属の植物(Thymus L.)の総称。
独特の爽やかで優しい香りが特徴。
肉や魚の煮込み料理や香草焼きなどによく使用されるハーブです。
ジンの製造に使用される他、ジントニックなどカクテルに1、2本添えることで香りの印象が変わり変化を楽しむことができます。
煎茶
定番度:★☆☆☆☆
日本の代表的なお茶の煎茶の茶葉もボタニカルとして使用されます。
煎茶は緑茶の一種で、日光を遮らずに栽培し、新芽を使用し、茶葉を揉みながら乾燥させていく製法の緑茶です。
煎茶はジンに、まろやかな香りと爽やかな苦みを付与します。
スパイス系ボタニカル
コリアンダーシード
定番度:★★★★☆
とても多くのジンに使用されるボタニカルです。
名前の通り、コリアンダーという植物の種(シード)を使用します。
コリアンダーはセリ科の植物で、実は「パクチー」と同種の植物です。
コリアンダーは英語圏での呼び方、パクチーはタイ語での呼び方、という違いです。
近年は一部でのパクチー料理ブームもあり、「葉」に注目されることも多くなっていますが、「種子」の部分はクセが少なく、肉料理や菓子にも使用される非常に汎用性の高いスパイスでもあります。
コリアンダーシードは、柑橘のような爽やかな香りとスパイシーな香りがあり、ジンのドライな味わいに寄与します。また、ジュニパーの香りを引き立たせる効果もあるため、かなり多くのジンで使用されています。
カルダモン
定番度:★★★☆☆
ショウガ科の植物(学名:Elettaria cardamomum)の種子からつくられる香辛料。
「スパイスの女王」とも呼ばれます。
楕円形の緑色の果実には強い香りはなく、中にある黒褐色の種子に特徴的な芳香があります。
非常に爽やかなスパイシーな香りが特徴であり、高価なスパイスの一つでもあります。
カレーのスパイス、肉料理の臭み消し、お菓子の香りづけ、のほかに紅茶やコーヒーに加えることもある、幅広く使用されるスパイスです。
カルダモンはジンに爽やかでありスパイシーな香りをもたらします。
シナモン
定番度:★★★☆☆
シナモンは、ニッケイ属(Cinnamomum)の樹木の内樹皮から得られる香辛料。
粉状にしたシナモンパウダーの他、樹皮のまま細長く巻いたシナモンスティックにして用いられる、洋菓子やハーブディーによく使用されるスパイスです。
ジンに、独特でありながら優しく甘い香り、それに加えてかすかなスパイシーさをもたらします。
他のボタニカルの個性を消してしまうこともあるほどに特徴が強いため、使用量には注意が必要です。
カッシア
定番度:★★★☆☆
中国や東南アジア諸国で育つ、シナモンの近縁種の香辛料です。
シナモン同様に内樹皮を使用します。
シナモンとの違いは、甘さがないこと。ジンにスパイシーな香りを付与します。
ナツメグ
定番度:★★★☆☆
ニズニク(Myristica fragrans)の樹木の種子を砕いて粉末状にした香辛料。
果実の仮種皮と呼ばれる部分は「メース」、仮種皮に包まれた種子は「ナツメグ」と、一つの果実から2種類のスパイスが得られるという特徴があります。
ナツメグは、スパイシーで刺激的な香りとともに、ほのかな甘み、ほろ苦さを持つスパイスであり、肉料理の臭み消しに用いられる他、お菓子作りにも使用されます。
ジンではクラシックなスタイルのジンでよく使用されるボタニカルでもあり、主にスパイシーさを与える働きをします。
ジンジャー(生姜)
定番度:★★★☆☆
食卓にもよく登場する生姜もジンに使用されるボタニカルの一つです。
生姜はショウガ科ショウガ属の多年草であり、学名は「Zingiber officinale」、英名は「Ginger」です。
根茎部分が香辛料としてよく使用されます。
ジンには、ジンジャー特有のピリッとしたキレのあるスパイシーな香味を付与します。
シトラス系ボタニカル
現代のジンに欠かせないボタニカルの種類がこのシトラス系、柑橘類のボタニカルです。
レモンピール
定番度:★★★☆☆
その名の通り、レモンの果皮(ピール)が使用されます。
レモンの学名はCitrus limon。
華やかなシトラス香とほのかな苦みによるキレのある味わいを付与することができるシトラス系のボタニカルです。
ジュニパーベリーの香りを引き立たせるというジンとの相性の良さもあります。
オレンジピール
定番度:★★☆☆☆
オレンジの果皮(ピール)が使用されます。
オレンジの学名はCitrus Sinensis。
シトラス香とともに、甘みのある味わいとフルーティーな香りをつけられるのが特徴。
グレープフルーツピール
定番度:★★☆☆☆
グレープフルーツの果皮(ピール)が使用されます。
グレープフルーツの学名はCitrus aurantium。
軽さのあるシトラス香とほろ苦さを付与することができます。
まとめ
ジンの製造に使用されるボタニカルを、以下のグループ分けのもと18種類紹介しました。
・メインのボタニカル
・薬草・香草系ボタニカル
・スパイス系ボタニカル
・シトラス系ボタニカル
このほかにも様々なボタニカルが使用されますが、いわゆる定番とされるボタニカルは網羅できているはずです。
ジンを選ぶ際の参考に、ジンを飲む時の楽しみの一つに、参考になれば幸いです。
こちらの記事で、ジンを特徴別に分類し紹介しています。