こんばんは、猫田です。
近年、最も勢いのあるお酒と言えばなんでしょう。
…そう、「ジン」です!
(せっかちですみません)
クラフトジンや国産ジン、ジンのRTDなど目にする機会も増えてきたのではないでしょうか。
ジンは2010年頃から、小規模蒸溜所で造られる個性豊かな“クラフトジン”というジャンルで人気が高まっているお酒なのです。
ただ、2022年現在、ジンブームは続いているのか、今後どうなっていくのか、という点が気になるところではないでしょうか。
そこでこの記事では、「ジンブームは続いているのか」「ジンブームは今後どうなっていくのか」を、データをもとに検証してみた結果をお伝えします。
■こんな方におすすめ
・酒類関連のお仕事をされている方
・話題づくりのため流行を抑えておきたい方
■本記事の内容
・ジンブームは本当に起きているのかの検証
・ジンブームは今後どうなっていくかの考察
・ジンブームを楽しむ・理解するためのおすすめ銘柄の紹介
■筆者「猫田」について
・某ビール会社で3年間、生産管理の業務に携わっていました。
・趣味はお酒を飲むこと、バー巡り、カクテルづくり。
・特に好きなお酒はジンです。
・お酒の情報に特化したブログ「猫田の酒ブログ」を運営しています。
【検証】ジンブームは続いているのか
国内の酒類消費量の推移
皆さんご察しの通り、日本国内で酒類自体の消費量は減少傾向にあります。
原因は様々ですが、人口の減少、健康志向の高まり、娯楽の多様化、が大きく影響しているといわれています。
こちらのグラフは、国内の酒類全体の消費量を表しています。
酒類の消費量は1999年をピークに減少傾向にあります。
グラフから2015年あたりから減少のペースが速まっていることが分かるかと思います。
これはコロナ禍以前から起きている現象と読み取れますね。
では、その中でジンの消費量はどのような推移になっているのでしょうか。
なおこちらのデータでは、ジンはスピリッツに含まれています。
このスピリッツは、「ウォッカ」や「テキーラ」、そして缶チューハイの原料にも使用される「原料用アルコール」も含まれることをご理解下さい。
ビール系飲料は消費量が減少しているとはいってもかなり多いですね。
ビールの度数が5%程度で数量(kl)でのグラフであることも大きく影響しているとは思います。
そこでビール系飲料を覗いた5種で改めてグラフを作成しました。
「スピリッツ」が明らかにのびていることが分かるかと思います。
しかもその成長スピードも増してきており明らかな市場の変化が見て取れます。
一方、消費量の減少が顕著なものは「ビール」「日本酒」「焼酎」となっています。
ビール系飲料の消費量はとびぬけて多いものの、減少の速度も他に比べ速くなっています。
コンペティションのエントリ数
スピリッツの消費量が国内でも増加傾向にあることはわかっていただけたかと思います。
では、ジンが成長分野なのかという点を調査するため、お酒の品評会(コンペティション)の出品数から、スピリッツの中でジンがどのような位置にあるのかを見てみたいと思います。
ジンを含むスピリッツを対象にしたコンペティションで主なところは、ISC, IWSC, SFWSC, TWSCの4つです。
それぞれどのようなコンペティションであるかはこちらの記事で解説しています。
今回は中でも出品数や評価のバランスが良いISCを代表に調査しました。
コンペティション自体が成長しており、どの種類のスピリッツもある程度伸びてはいますが、ウイスキー(水色の線)とジン(青色の線)が特に成長していることが分かるかと思います。
ウイスキーはもともとエントリ数も多く順調にエントリ数を伸ばしているのに対し、ジンはもともと十数点しかエントリがない状態から急速にエントリ数を伸ばし、ここ2~3年の伸び率はとびぬけています。
今後も増えていくことが期待できそうです。
ジンブームを示すその他の情報
・国内蒸溜所の数
2014年以降、大手酒類メーカーや既存のウイスキー蒸溜所、日本酒醸造所などがこぞってジンの生産を開始しています。
大手酒類メーカーとしては、サントリー(代表銘柄:翠(SUI)・六(ROKU))やニッカ(代表銘柄:カフェジン)が主力です。
日本酒やウイスキーの製造を手掛けていたサクラオB&D(元・中国醸造)が2017年にジン製造を開始し、国産ジンの主力製品となる桜尾ジンを販売しています。
また、ジン専門の蒸溜所も多く設立され、小規模の蒸溜所で造られる“クラフトジン”の国内での拡がりを牽引しています。
新たに設立されたジン蒸溜所としては、京都蒸溜所(設立:2014年 / 代表銘柄:季の美)、北海道自由ウヰスキー(設立:2018年 / 代表銘柄:9148)が特に注目されています。
このように、ここ数年間で大小問わず様々な企業が次々とジン製造を開始している状態は、まさにジンブームを体現していると考えられます。
ここで紹介した以外にも数々のジン蒸溜所が誕生していますので、これから益々競争が激しくなりそうです。
・国産ジンの輸出量
2018年のジン輸出量は1405klとなり、前年比606.6%という大躍進。
蒸留酒の輸出量としてはウイスキーに次いで2位となりました(金額ベース)。
輸出量の増加は、国産ジンの発展という側面だけではなく、世界的なジンブームを示しているとみることができます。
実際、ジンの本場イギリスでは、2018年の市場規模ではウイスキーをジンが抜いています(金額ベース)。
国内の消費量だけでなく海外需要の高まりもあり、国内に誕生したジン蒸溜所にも海外に販路を向けている蒸溜所も多数あります。
先に述べた通り、国内の酒類消費量自体は減少傾向にありますので、現在伸びているジン市場であっても“海外展開”が重要な視点になると思われます。
・サントリーの戦略
サントリーは、2021年の国内酒類市場において、ジンカテゴリーの伸長率はさまざまな酒類カテゴリーの中で最大となり、とりわけ国産ジンの存在感が高まっていると見ています(※1)。
それを受けて「「翠(SUI)」「ROKU(六)」など国産ジンのマーケティング活動を強化」することを発表しています。
※1. https://www.suntory.co.jp/news/article/14079.html
現に、サントリーはジンのRTDとなる「翠ジンソーダ缶」を発売し、ジンの新たな飲み方を提案することでジン需要をさらに刺激しようとしています。
【考察】ジンブームは今後どうなるのか
さて、消費量の増加やコンペ出品数の増加、国内蒸溜所の増加など、様々な側面から見て、ジンの流行は実際に起こっていることがご理解いただけたかと思います。
では、ジンの流行はなぜ起きて今後どうなっていくのか、を考察していきたいと思います。
ジンの流行の要因
「ジンは自由である」
ジンブームの拡がりの要因はここに集約されると考えられます。
ジンは、穀物を原料とした蒸溜酒“グレーン・スピリッツ”に、ボタニカル(植物)で香りづけをすることにより造られます。
ジンをジンたらしめるのは、ボタニカルとして使用される“ジュニパーベリー(セイヨウネズの球果)”というスパイスでありこれこそがジンのアイデンティティと言えます。
ジンの本場イギリスではジンの定義は
・ジュニパーベリーの香りが主体
・瓶詰め後アルコール度数は37.5%以上であること
とされています。
逆に言えば、「ジュニパーベリーの香りが主体」ということさえ守りさえすれば、どのような原料を使用してもよいといえます。
例えば、柚子を使用したり、抹茶を使用したり、昆布を使用したり、胡瓜を使用したり…
この点から、「ジンが自由である」と言えます。
この自由さによって、その地域の特産品を生かしたジンを造ることが可能となるため、新ブランドや新商品の開発がしやすいというメリットが生まれます。
地域に根ざした“クラフトジン”も生まれやすくなっています。
ジンの流行の今後
では、ジンブームは今後どうなっていくのか。
それを考察する際にとても良いサンプルがあります。
それは「ウイスキー」です。
ウイスキーは2008~2015年頃にブームを起こし、今でこそ落ち着きを見せているものの高い人気は維持されています。
そんなウイスキーブームは以下のステップを経てきました。
ステップ1:飲み方の提案
2008年ごろからサントリーが“ハイボール”としての楽しみ方を提案しています。
その銘柄は皆さんご存知「角」です。
ハイボールにより、ウイスキーはおじさんが飲むものというイメージを払拭することに成功しています。
ステップ2:製品の国際的評価
国際的なコンペティションで多くの賞を受賞し、高い評価を得られています。
特にサントリーの響や山崎はISCなど国際的なコンペティションにおいて、最も評価の高いTrophyを何度も受賞しています。
ステップ3:話題の提供
2014年~2015年に放送された、NHKの連続テレビ小説“マッサン”によってジャパニーズウイスキーの人気に火がつきました。
このドラマで取り上げられていた「竹鶴」の販売数量は、前年比150~200%をマークするほどに大きく売り上げを伸ばしました。
このウイスキーブームと今回のジンブームを比較してみましょう。
ステップ1:飲み方の提案
2020年からサントリーが翠(SUI)でジンソーダという飲み方を提案し、2022年には今の流行りであるRTD(缶チューハイなどそのまま飲める飲料)として“ジンソーダ缶”を販売し始めました。
新しい普段飲みの飲み方の提案という点で一致しており、さらには“サントリーが…”という点までも共通していますね。
ステップ2:製品の国際的評価
ここは8割方達成しているとみて良いでしょう。
国際的な評価という観点でジャパニーズジンを牽引しているのは「季の美」(京都蒸溜所)でしょう。2018年にIWSCで最高賞のTrophyを受賞しています。
ただし、それに続く銘柄がまだ少なく(TWSCは日本で開催されるコンペティションのため除いています)、ジャパニーズジン全体の評価が上がることを期待したいです。
ステップ3:話題の提供
こちらはまだジンで起きてはいません。
ただし、ウイスキーはテレビドラマでしたが、今ではYou Tubeやインスタグラムなど様々なプラットフォームがありますのでいつ起きてもおかしくありません。
このようにウイスキーのブームと比較すると、共通点も見えてきた一方、「話題の提供」という面ではまだ足りていない(伸びしろがある)ということが分かるかと思います。
ジンブームは既に起こっており、競争が激化しているため品質の向上も見込める状態ですが、ジンの流行が爆発的なブームとなるかは「話題となる何か」が出てくるかにかかっていると思われます。
猫田としては“起爆直前”という状態と見ています。
【紹介】ジンブームを楽しむ・理解するためのおすすめ銘柄
ジンブームが起こっており、さらなる発展が見込まれる現在。
“ジンブームを楽しむ・理解するために今飲んでおきたいジン”を紹介します。
特に酒類業界で働く方は今後ジンの話題に触れる機会も増えてくると思われますので、基本となる銘柄は抑えておいた方が良いでしょう。
ジンブームを楽しむ・理解するためにおすすめの「基本となるジン」「海外のクラフトジン」「国内のクラフトジン」をご紹介します。
基本となるジン
基本となるジンはやはりイギリスのジンです。
ジンはオランダ発祥ですがオランダジンはかなり味が特徴的。
現代のジンはイギリスのロンドンドライジンの流派にあるといえるでしょう。
そんなロンドンドライジンから、定番のジンの味を知ることができる銘柄を2種類、ジンの特徴である“ジュニパーベリー”の香味を知ることができる銘柄を1種類ご紹介します。
どれも有名な銘柄ですので、クラフトジンはこれらと比較して語られることも多いです。
ビーフィーター
最も有名なロンドンドライジン。
ロンドンドライジンの伝統的な製法、1820年の創業以来変わらないレシピ、で製造を続けています。
ジュニパーベリーをはじめとするバランスの良い香りは、カクテルのベースに適したジンに仕上がっています。
低価格帯の居酒屋から、高価格帯のバーまで、様々なシーンで飲まれているジンです。
タンカレー ロンドン ドライジン
バーで最も愛されているジンの一つ。
ジン特有の香味がありながら、雑味のないすっきりとした味わいはカクテルのベースに最適です。
ビーフィーターよりはやや高価ですが、本格的なバーには必ず置いてあるジンです。
ゴードン ロンドン ドライジン
重厚感があり、キリッと辛口に仕上げたファンの多い銘柄。
王道の香味ではありますが、ジュニパーベリーを多く使用しており、がっつりとジュニパーを押し出した味わいになっています。
「ジュニパーベリーってどんな香り?」を知りたい方はゴードンで確認しましょう。
海外のクラフトジン
モンキー47
世界的なクラフトジンブームの火付け役。
ドイツのクラフトジンです。
47種類という多くのボタニカルを使用しているのが最大の特徴です。
そのボタニカルにより造り出される華やかで豊かな香りも素晴らしいのですが、47種類のボタニカルの複雑な香りをしっかりとまとめることができているという点で世界中から評価されているジンです。
ジンブームを語る際には必ずと言っていいほど名前が挙がる銘柄です。
モンキー47を飲まずしてジンブームは語れません。
国内のクラフトジン
季の美
日本のクラフトジンブームの火付け役。
2014年に誕生した京都蒸溜所が造る、日本らしい繊細な香味に仕上げた逸品。
ベースとなるのは米を原料にしたライススピリッツ。
ボタニカルには「柚子」や「山椒」、「玉露」に「檜」などの和素材をふんだんに盛り込んだ、他にはないセレクトです。
日本のクラフトジンを代表する銘柄です。
翠(SUI)
ジンブームの拡大に一役買っているサントリーのジン。
柚子・緑茶・ショウガの3種類の和素材を使用しているのが特徴で、非常にあっさりとした飲み口になっています。
“ジンソーダ”という飲み方の提案や、RTDとしての”ジンソーダ缶”としての展開など、今まさにジン市場を動かそうとしている注目の一本です。
まとめ
今回解説したジンブームの現状と今後について以下にまとめます。
■国内消費量
国内の酒類消費量は減少傾向
ただしスピリッツの消費量だけは増加傾向
■コンペティション出品数
スピリッツの国際的なコンペは全体的に拡大中
2016年以降ジンのエントリ数の伸び率がとびぬけている
■国内ジン蒸溜所
日本酒・ビール・ウイスキーメーカーもジンの製造を始めている
ジン専門の小規模蒸溜所も2014年以降多く誕生し続けている
■国産ジン輸出量
前年比数百%という異常な伸び率をマークしている
■ジンブームの要因
「自由であること」
香りづけで使用されるボタニカルは、ジュニパーベリー以外は基本的にどんなものを使用してもよく、独自性を出しやすく、小ロットで様々な種類を製造するスタイルに合っている。
■ジンブームの今後
「さらに伸びる可能性がある」
先にブームが起こったウイスキーの状況が似ている。
“ジンソーダ”という新しい飲み方の提案、国際的な評価を得ている、という条件がそろっており、後は「話題となるきっかけ」が重なると爆発的な流行となると予想できる。
■ジンブームを語るためには…
基本となる「ビーフィーター」「タンカレー」「ゴードン」は抑えておきたい。
世界的なクラフトジンブームの火付け役「モンキー47」、日本のクラフトジンブームの火付け役「季の美」あたりを飲んでおくと、クラフトジンの話題に乗りやすいのでおすすめ。
結論!
ジンブームは現在も続いており、今後爆発的に伸びる可能性も秘めている!
ジンの基本情報はこちらで解説しています。
プレゼントにおススメのジンはこちらでご紹介しています。
ジンを香味特徴別に分類しました。