アブサンは、独特な香りや高めの度数、少しミステリアスなイメージから、名前は知っていても実際にはよくわからないという方が多いお酒です。
お酒の作品やバーのシーンなどで見かけて気になったものの、「どんな味なの?」「初心者でも飲めるの?」と感じた方もいるのではないでしょうか。
独特の存在感がある一方で、飲み方や歴史に少しクセがあるため、最初の一杯としてはややハードルが高く感じやすいお酒でもあります。
この記事では、アブサンとはどんなお酒なのか、どんな味わいなのか、主な原料や作り方、飲み方、選び方までを初心者向けにわかりやすく解説します。
アブサンが気になっている方が、自分に合いそうかどうかを判断しやすくなるように整理していきます。
アブサンは、「芸術家に愛された酒」としても有名。
なぜ一部の職業の人々を魅了したのか。その魅力に迫ります!
【このページでわかること】
- アブサンとはどんなお酒か
特徴や味わい、他のお酒との違いがわかります。 - アブサンに使われる主な原料や作り方
独特な香りや風味がどこから生まれるのかを整理して解説します。 - アブサンの代表的な飲み方
フレンチリチュアルをはじめ、初心者向けの楽しみ方がわかります。 - アブサンは危険なお酒なのか
歴史的なイメージも踏まえつつ、初心者が気をつけたいポイントを解説します。 - 初心者でも選びやすいアブサンの銘柄
はじめて試すときの参考になるおすすめ銘柄を紹介します。
『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』をきっかけにアブサンが気になった方は、登場するお酒をまとめたこちらの記事もあわせてご覧ください。
アブサンとは?
アブサンの特徴
アブサンは、ニガヨモギやアニス、フェンネルなどのハーブで香りづけをした、薬草系のお酒です。
ベースは蒸留酒で伝統的にはスピリッツとして整理されることが多い一方、ハーブリキュールとして扱われることもあります。
>リキュールの定義はこちら
アブサンの特徴は、ハーブ由来の個性的な香りと風味にあります。
アニスやフェンネル由来の甘く華やかな香りに、ニガヨモギ由来の薬草らしい青さやほろ苦さが重なり、他のお酒にはあまりない複雑さがあります。アルコール度数が高めのものが多いこともあり、甘く飲みやすいタイプのお酒というより、香りや個性を楽しむお酒といえます。
また、アブサンは多くの芸術家に愛されたお酒としても知られています。
独特の香りやミステリアスなイメージ、さらに飲み方に独自の作法があることも、アブサンが特別な存在として語られてきた理由のひとつです。
アブサンはどんな味?
アブサンの味わいをひとことで言うと、ハーブの力強さとアニス系の甘い香りが同時に感じられる味です。
口に含むと、まずアニスやフェンネル由来の甘く華やかな香りが広がり、そのあとに薬草らしい苦味や清涼感が続きます。銘柄によっては、ミントのような爽やかさやスパイス感、青みのある複雑な余韻を感じることもあります。
ただし、一般的な甘口リキュールをイメージして飲むと、印象はかなり違うかもしれません。
アブサンは甘さを前面に出すお酒というより、香りの個性や薬草感を楽しむお酒です。そのため好き嫌いは分かれやすい一方で、ハーブ系のお酒や個性的なお酒が好きな方には合いやすい味わいです。
アブサンの主な原料
アブサンの香りを形づくる主な原料
アブサンの風味の核になっているのは、ニガヨモギ、アニス、フェンネルです。
どれも日本では日常的になじみのある植物ではないかもしれませんが、アブサンらしい香りや味を理解するうえで大事な原料です。
ニガヨモギは、ヨモギの仲間にあたるハーブで、アブサンを特徴づける代表的な原料です。
独特の苦味や青さ、薬草らしい風味につながる部分で、アブサンらしさの土台を支えています。
アニスは、甘い香りを持つスパイスの一種です。
甘草を思わせるような香りがあり、アブサンに華やかさや甘いニュアンスを加える役割があります。アブサンの香りをかいだときに感じやすい甘い印象は、このアニスによるところが大きいです。
フェンネルは、セリ科のハーブで、料理ではハーブやスパイスとして使われることもあります。
アブサンでは、アニスに通じるやわらかい甘さや清涼感を支える原料で、ニガヨモギの苦味をやわらげる役割もあります。
また、アブサンにはこの3つ以外にも、ヒソップ、メリッサ、アンジェリカ、コリアンダー、ミントなど、さまざまなハーブやスパイスが使われることがあります。
こうした副原料の違いによって、香りの華やかさや青み、清涼感、スパイス感などに差が出て、銘柄ごとの個性につながります。
このように、アブサンは単に苦い薬草系のお酒というより、複数のハーブやスパイスが重なって生まれる複雑な香りや風味を楽しむお酒といえます。
ハーブやボタニカルを使ったお酒に興味がある方は、ジンの解説記事もあわせてどうぞ。
アブサンの作り方
伝統的なアブサンの作り方
アブサンは、ベースとなる蒸留酒にハーブやスパイスを漬け込み、その液体を蒸溜して香味を引き出すのが伝統的な作り方です。
中心になるのは、ニガヨモギ、アニス、フェンネルで、ここに銘柄ごとの個性に応じてヒソップやメリッサなどのハーブが加えられることもあります。こうして原料由来の香りや苦味、甘さのもとになる成分を取り込みながら、アブサンらしい複雑な風味が形づくられていきます。
蒸溜を行うことで、単にハーブを漬け込んだだけでは出しにくい、すっきりした香りやまとまりのある味わいに仕上がります。
蒸溜直後の液体は基本的に無色透明に近く、ここからそのまま仕上げればブランシュ系になります。
一方で、伝統的なグリーンアブサンでは、蒸溜後にあらためてハーブを浸漬し、自然な緑色と追加の香りを与える工程があります。この緑色は、主にハーブに含まれるクロロフィルによるもので、色づけと同時に風味にも厚みを加える役割があります。
銘柄による違い
アブサンの作り方には共通する軸がありますが、実際の仕上がりは銘柄ごとにかなり異なります。
使うハーブの種類や配合が違えば、苦味が前に出るもの、アニスの甘い香りが強いもの、清涼感が目立つものなど、印象は大きく変わります。透明なまま仕上げるタイプもあれば、ハーブ由来の自然な緑色を持つタイプもあります。
また、現代では蒸溜を行わず、香料や色を加えて作られる簡易的なタイプもあります。
そのため、同じアブサンという名前でも、伝統的な製法に近いものと簡易的な製法のものでは、香りや味わいに差が出ることがあります。
アブサンの飲み方

フレンチリチュアル
アブサンの代表的な飲み方として知られているのが、フレンチリチュアルです。
グラスにアブサンを注ぎ、その上に専用スプーンを置いて角砂糖をのせ、そこへ冷水をゆっくり垂らしていく飲み方です。水が加わるにつれて砂糖が少しずつ溶け、アブサンの液色も白く濁っていきます。これはアブサンならではの楽しみ方としてよく知られています。
この飲み方が広く親しまれている理由は、アブサンの強い香りや高めの度数を、冷水でやわらげながら楽しめるからです。
そのまま飲むよりもハーブの香りが開きやすくなり、アニス系の甘い香りや薬草らしいニュアンスも感じ取りやすくなります。水の量は銘柄や好みによって変わりますが、まずはアブサン1に対して水3〜5くらいを目安にすると試しやすいです。
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ストレートで飲むときの注意点
アブサンをストレートで飲むこと自体はできますが、初心者にはあまりおすすめしにくい飲み方です。
もともとアルコール度数が高いものが多く、香りや苦味もかなりはっきりしているため、いきなりストレートで飲むとアルコールの強さばかりが前に出やすくなります。まずは加水して全体のバランスを見たうえで、必要なら少量をストレートで試すくらいの入り方が無理がありません。
また、アブサンは香りの変化を楽しむお酒でもあるため、ストレートよりも少し加水した方が個性をつかみやすいこともあります。
とくに初めて飲む場合は、強さを我慢して飲むより、自分が飲みやすい濃さを探しながら楽しむ方が合っています。
初心者におすすめの飲み方
初めてアブサンを試すなら、まずはフレンチリチュアルで、しっかり冷水を加えて飲む方法がおすすめです。
伝統的な飲み方でもあり、アブサンの香りや個性を無理なく感じやすいからです。角砂糖を使うかどうかは好みですが、最初は少し甘さが入った方が飲みやすく感じる人もいます。
一方で、火を使う飲み方は見た目のインパクトはあるものの、伝統的な方法ではなく、風味の面でも好みが分かれます。
初心者が最初の一杯として選ぶなら、まずはフレンチリチュアルから入る方が、アブサンそのものの魅力をつかみやすいと思います。
アブサンは危険なお酒?
アブサンは危険なお酒なのか
結論からいうと、アブサンだから特別に危険なお酒というわけではありません。
ただし、アルコール度数が高いものが多く、香りや個性もかなり強いため、飲み方によっては負担を感じやすいお酒ではあります。実際に市販されているアブサンは高アルコールのものが多く、加水して飲まれることが一般的です。
また、アブサンは昔から「幻覚を見せる酒」のように語られることがありますが、そうしたイメージは歴史的な背景の影響が大きく、現在の理解とは少しズレがあります。
少なくとも、現代に流通しているアブサンを、そうしたイメージだけで特別視しすぎる必要はありません。まずは度数の高い薬草系のお酒として考えると、実態に近いです。
アブサンが危険なお酒といわれた歴史
アブサンが危険なお酒といわれるようになった背景には、19世紀末から20世紀初頭にかけての強い悪評があります。
当時は、アブサンがけいれんや幻覚、精神の不調を引き起こす酒だと考えられ、各国で問題視されました。その結果、スイスでは1908年、フランスでは1915年に禁止され、ほかの国でも規制が広がっていきました。
その後、こうした有害性の原因は、かつてはニガヨモギ由来のツジョンにあると考えられていましたが、その見方は見直されていきます。
現在では、アブサンだけを特別な危険酒として扱うよりも、アルコールそのものの摂取量や品質、当時の飲酒環境なども含めて考えるべきだとされています。EUでも、ツジョンは無制限に認められているわけではなく、上限管理の考え方が前提になっています。
ただし、現在は各国で見直しが進み、成分の基準のもとで流通しています。
初心者が気をつけたいポイント
アブサンを初めて飲む場合にいちばん気をつけたいのは、度数の高さです。
銘柄によって差はありますが、一般的なリキュールやワインよりかなり高いアルコール度数のものが多いため、ストレートで一気に飲むような飲み方はおすすめしにくいです。まずはフレンチリチュアルのように冷水を加えて、香りや味の変化を見ながらゆっくり楽しむ方が無理がありません。
また、アブサンは香りや苦味の個性がはっきりしているので、甘いリキュールの感覚で飲むとギャップを感じやすいです。
最初は少量から試して、自分に合う濃さを探しながら飲むのがおすすめです。体調がよくないときや空腹時に強いお酒を飲むと負担が出やすいので、その点にも注意したいところです。
アブサンのおすすめ銘柄
はじめてでも比較的試しやすい銘柄
ペルノアブサン
初めてアブサンを試すなら、まず候補にしていただきたいのがペルノアブサンです。
ペルノはアブサンの歴史を語るうえで外せないブランドのひとつで、伝統的なアブサンの流れをくむ銘柄としても知られています。知名度が高く、アブサンの世界に入る最初の一本として選びやすいのが強みです。
味わいとしては、いきなり極端な個性に振り切るというより、アニスやフェンネル系の香りを軸にアブサンらしさをつかみやすいタイプとして考えやすいです。
もちろん度数は高めなので加水前提ですが、「まずアブサンとはどんな方向の酒なのかを知りたい」という人には入り口にしやすい銘柄です。
個性をしっかり楽しめる銘柄
アブサン(チェコ)/グリーン・ツリー蒸留所
個性をしっかり楽しみたいなら、アブサン(チェコ)/グリーン・ツリー蒸留所がおすすめです。
この銘柄は、スパイシーなニガヨモギの味が特徴的で、強めの個性を楽しみたい人に向いています。
万人向けというより、「アブサンらしい強さやクセも含めて体験したい」という人向けの一本として置くのが自然です。
『上伊那ぼたん』きっかけで気になる銘柄
EMERAUDE
『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』という作品をきっかけにアブサンに興味を持った方も多いでしょう。
作中で登場した銘柄はEMERAUDEという黒い細長いボトルのアブサンです。
この銘柄はスイス・Val-de-Travers の Absinthe Bovet La Valote の製品であり、77%の高アルコールで、法律上認められる範囲で高めのツジョン量となっている、かなり本格派寄りの銘柄です。
残念ながら国内では手に入りにくいため、まずは他の銘柄で雰囲気を味わってみるのが得策です。
アルケミエ グリーンアブサン
もうひとつ、『上伊那ぼたん』きっかけでアブサンに興味を持った方におすすめなのが、アルケミエ First Essence Green Absintheです。作中ではアルケミエジンが登場していましたが、セリフでこちらのアブサンにも触れられています。
郡上産のニガヨモギを含む複数のハーブを使ったグリーンアブサンであり、ハーバルな味わいと軽快な痺れの余韻が特徴です。
個性的な香りのお酒が気になってきた方は、王道から個性派まで比較したジンのおすすめ記事も参考になります。
まとめ
アブサンは、ニガヨモギやアニス、フェンネルなどのハーブで香りづけをした、独特の個性を持つお酒です。
薬草らしいほろ苦さと、アニス系の甘く華やかな香りが重なった味わいは、他のお酒にはあまりない魅力があります。
一方で、度数の高いものが多く、歴史的なイメージもあるため、少しハードルの高いお酒に感じる方もいるかもしれません。ただ、特徴や飲み方を知ったうえで選べば、必要以上に身構えるお酒ではありません。
初めて試すなら、まずはフレンチリチュアルのように冷水を加える飲み方から入るのがおすすめです。
銘柄選びに迷った場合は、比較的試しやすいものから始めて、慣れてきたら個性の強いタイプや、作品で気になった銘柄に広げていくと楽しみやすいと思います。
アブサンは、味わいだけでなく、原料や飲み方、背景まで含めて楽しめるお酒です。
気になっていた方は、ぜひ自分に合いそうな一本から試してみてください。