【ホップとは】ホップの成分やビール製造における役割を徹底解説!

こんばんは、猫田です。

安定して人気を増しているお酒のジャンル“クラフトビール”
家飲みの機会が増える中、「ちょっと特別なビールを飲みたい」という希望を叶えてくれる存在です。

そんな、クラフトビールの流行の中で最も注目されているスタイルの一つが
“IPA(インディアンペールエール)”

これはホップを大量に使用し、苦味や香りをはっきりと表に出したビアスタイルです。
強烈な個性に魅了される熱狂的なファンが多く人気になっています。

つまり、近年のビールで最も注目されている原料は“ホップ”であるといえます。
それを表すように大手ビールメーカーも、ホップの特徴を出した新商品を数多く展開しています。

【この記事でわかること】
・ホップとは何か
・ホップにはどのような品種があり、どこで生産されているのか
・ホップの成分にはどのようなものがあるのか
・ビール造りにおいてホップがどのような役割を果たしているのか
・ホップはビールの製造工程でどのように使用されているか

ホップとは

ビールの苦味はホップから。
ビール純粋令でも「ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし」とされており、ビール製造になくてはならないものです。

学名はHumulus lupupus
アサ科カラハナソウ属のつる性の多年生植物です。

支柱につるを巻き付けながら8~12mほどまで成長するのが特徴。
収穫のし易さや気候などを考慮し栽培方法は様々ですが、一般的な棚の高さは6m程度となっています。

ホップ栽培

ビール製造に使用するのは“球果”と呼ばれる花の部位です。
緑色をした松ぼっくり状の見た目をしているのが特徴。

その中のルプリンという黄色い粒がビール特有の苦味のもととなる樹脂や精油成分を含む部位になっています。
ちなみに、かなりべたべたしているので触る際は注意が必要です。

ちなみに、ホップは雄株と雌株に分かれている“雌雄異株”の植物で、ビール製造で使用するのは雌株のみ。
しかも未授精の雌株でないと使用できないため、雄株は一緒に栽培されません。

また、ホップは多年生植物であるため、一度植えられると10~30年ほど生育します。
毎年春になると芽をだして成長を始め、夏に収穫されます。
その後はつるを切り株に土をかけて冬を越します。
通常は3年目以降に最も生育が良くなり、より多くの花をつけるとされています。

ホップの種類

香味特徴による分類

ホップの品種は世界中で100以上あるといわれています。
品種ごとに香りや苦味が異なり、香味特徴によって大きく3種類に分類されています。

・ビターホップ

苦味質が非常に多いホップです。
苦味成分のもととなるアルファ酸を大量に含んでおり、「高アルファ酸ホップ」とも呼ばれています。

代表例:ナゲット(アメリカ)、マグナム(ドイツ)、ヘラクレス(ドイツ)、コロンバス(アメリカ)

・アロマホップ

華やかな香りとバランスの良い苦味が特徴です。

代表例:ハラタウトラディション(ドイツ)、ペルレ(ドイツ)、カスケード(アメリカ)、シトラ(アメリカ)

・ファインアロマホップ

比較的穏やかながら上品な香りが特徴です。

代表例:ザーツ(チェコ)、テトナング(ドイツ)

ビール製造ではこれらのホップを組み合わせて使用することがほとんどです。
アロマホップやファインアロマホップは華やかな香りを持っているため、特にアピールポイントとして使用されることが多いです。

ホップの主要産地

ホップは冷涼で乾燥した気候を好みます。

主要な生産国はドイツ、アメリカ、チェコ、中国。
ドイツのテトナング地方、ハラタウ地方、チェコのザーツ地方が名産地とされています。

近年はニュージーランドなども注目されている産地となっています。
また、生産量は少ないものの日本でも栽培されており、北海道や東北地方で生産されています。

日本で製造されているビールは国産のホップを使用しているものがありますが、それはわずかで、ドイツやチェコなどから輸入されたホップが主です。

ホップの成分

ホップ

ビール醸造にとって重要なホップの成分は「樹脂(苦味成分)」「精油(芳香成分)」「フェノール成分」です。

樹脂(苦味成分)

ホップのエーテル及び冷メタノール可溶成分が樹脂と称される物質です。
アルファ酸その代表例。

アルファ酸は苦味のもととなる成分ですが、アルファ酸そのものの苦味は強くありません。

アルファ酸が熱によってイソアルファ酸に変化します。
そのイソアルファ酸が強い苦味を呈すため、ホップを添加して煮沸して造られるビールには、爽快な苦みが付与されます。

精油(芳香成分)

ビールに爽快な香りをもたらすホップの芳香成分はホップ精油中に含まれる成分に由来しています。

ホップの精油成分は、テルペン系炭化水素類、アルデヒド類、エステル類、アルコール類等数百を超える多くの化合物が含まれています。

主要成分であるテルペン類は、ホップ精油成分の4~8割を占めており、ミルセン、フムレン、カリオフィレンが主な成分です。
その他にもリナロールと呼ばれるテルペンアルコールもビールの香味に影響を与えます。

フェノール成分

ビール中のフェノール類は、7~8割が麦芽から、2~3割がホップに由来します。

低分子フェノールは、抗酸化力があり、ビールの酸化を防ぐ役割を持ちます。
高分子フェノールは、ビールの色と混濁の形成に関与しています。
また、香味にも影響があり、渋みと味の厚みを与えるとされています。

ビールにおけるホップの役割

ホップ

苦味

ビールに欠かせない苦味はホップからもたらされます。
ホップに含まれるアルファ酸が、煮沸の熱により、イソアルファ酸に変化することで強い苦味を呈します。

ホップの品種によっても苦味の強さに大きな違いがあり、また、煮沸のどのタイミングでホップを投入するかによっても苦味の強さが変わります。

香り

ホップの爽快で特徴的な香りは、ビールの香りに大きく影響しています。

苦味同様にホップの品種に大きく左右されますが、製造工程のどのタイミングでホップを投入するかという点も、ビールの香りに大きく影響します。

泡持ち

ビールにおいて重要な「泡」。

泡があることで、グラスに注いだ時に炭酸が逃げるのを防ぐことができ、さらに、ビールが空気に触れて酸化するのを防いでくれます。

ホップに含まれるアルファ酸が熱により変化したイソアルファ酸は、ビールの泡の形成や泡持ち(泡が消えるまでの時間)に大きな影響を与えます。

殺菌作用

ホップには、菌の繁殖を抑える働きがあります。

多くのホップが使用されているビアスタイル「IPA」は、もともとイギリスからインドへの輸送に耐えられるビールをつくるために、殺菌効果のあるホップを大量に入れたことから生まれました。

現在では、ろ過工程の殺菌技術が発達しているため、ホップの殺菌作用は昔ほど大きなインパクトを持ちませんが、製造工程中の微生物リスクを抑えることは結果的に製品のリスクを抑えることにもつながるため、価値のある効果と言えます。

ビールの清澄化

ビールに含まれる過剰なタンパク質はビールを混濁させる原因になります。

ホップに含まれるポリフェノールは、麦芽由来のタンパク質と結合して沈殿するため、その沈殿物を取り除くことによってビールが清澄化されます。

その他のホップの効能

ホップには様々な健康の効果があるとされています。

催眠鎮静作用や利尿作用、食欲増進、消化促進作用などが主ですが、その他の薬理作用についても現在研究されており、ビール以外への活用も検討されています。

ビール製造におけるホップの使用方法

ビールの製造工程についてはこちらの記事で解説しています。

ホップを入れるタイミング

仕込工程の“煮沸”の際に投入するのが一般的な方法です。
麦芽の甘味がある麦汁にホップを入れて煮沸をすることで、ビール特有の苦みが付与されます。

ただし煮沸中にホップを投入するとしても、どのタイミングで投入するかによってビールの味や香りが大きく変化します。

基本的にホップが熱にさらされる時間が長いほど、苦味が強く、香りは弱くなります。
これは、アルファ酸→イソアルファ酸の変化によって苦味が強くなることに起因します。

また、香りの変化は煮沸中に芳香成分が揮散してしまうことによって生じます。

また、ホップの“香り”を強く出す方法に「ドライホッピング」というものがあります。

これは発酵以降の工程でホップを添加する手法であり、煮沸の影響を受けないので苦味を抑えつつ、ホップの香りを強烈にビールに与えることができます。

香味のコントロールも難しく、ホップの固形成分を発酵工程以降で除去しなくてはいけない点で、製造の難易度が高い方法ではありますが、近年はホップの特徴が強いビールの人気が高まっているため注目されている手法でもあります。

ホップの形態

ビールの製造に際してホップは様々な形態に加工して使用されます。

・ペレット 

ホップ ペレット

乾燥後に粉砕し、熱をかけて円柱状のペレットにします。

輸送コストを抑えることができ、保存性にも優れるので最も主流な形態です。

・ホップエキス

ルプリンの苦味質などの成分を抽出してペースト状に加工されます。
必要な成分のみを抽出してつくられるため、コストパフォーマンス良い使用方法と言えます。
ただし、苦味の添加に特化しており、香り成分やビール清澄化に必要な成分は乏しくホップエキス単体を使用することは基本的にはありません。

・リーフホップ

収穫したホップを、乾燥させプレスした状態で使用します。

ペレットに比べカサが増すので輸送コストはかかりますが、ホップ本来の香りを保ちやすく香りを大事にしたいビールで使用されることがあります。

・生ホップ

収穫後に冷凍することで酸化を防ぎます。

冷凍しその状態で輸送、保存するという点で非常にコストのかかる方法です。

ホップの香味を大事にしたい特別なビールで使用されます。

ホップを売りにしたビール

クラフトビールの広まりにより、ホップの特徴が強く出たビールが多くなっています。

特にIPAと呼ばれるビアスタイルはホップの強烈な香味が特徴的で熱狂的なファンの多いビアスタイルとなっています。

山の上のニューイ(ヤッホーブルーイング)

長野と山梨限定販売のビールです。

“エッシェンシャルホッピング製法”という、ホップに水蒸気を送り込んで蒸溜することで抽出した香りを発酵中のビールに加える、国内の缶ビールで初の製法を採用しています。
ドライホッピングで問題となるホップ除去時のロスを抑える方法になっています。

SORACHI1984(サッポロビール)

サッポロビールが品種開発したソラチエースというホップを使用した、ヒノキやレモングラスを思わせる香りが特徴の、パンチの効いたビールです。

CRYSTAL IPA(CRAFT X)

香りが華やかなクラフトビールです。
ストーンフルーツやパッションフルーツに近い香りを持つホップと柑橘系の香りを持つホップを使用し、煮沸中にホップの添加タイミングを分けているホップの香りにこだわったビールになっています。

まとめ

・ホップはつる性の植物でビール造りには球果と呼ばれる花が使用される。
・香りが強い品種や苦味が強い品種など様々な品種がある。
・ホップはビールの苦味や香りだけでなく、泡持ちや清澄化にも寄与している。
・ホップを投入するタイミングで香りの強さや苦味の強さが変わる。

ホップはビール製造に欠かせない原料。

ビールの定期便サービスについてこちらの記事で解説しています。

ビールの原料や製造方法についてはこちらの記事で解説しています。

IPAをはじめ多数あるビアスタイルはこちらの記事で解説しています。