【ビールの種類】代表的なビアスタイルの違いを苦味と色で分類して解説!

こんばんは、猫田です。

ビールと言えば、「透き通った黄金色と白い泡」という印象を持っている方も多いと思います。


しかし、世界には様々な種類のビールがあることをご存知でしょうか。
ビールの種類(ビアスタイル)は非常に多くのものがあり、ドイツやベルギーをはじめ世界中で様々なビアスタイルが楽しまれています。

ビアスタイルごとに特徴がありますが、中でも「苦味」と「色」の違いは、そのビアスタイルを特徴づけるものでもあります。

そこで、この記事では、
・ビールの苦み(強・中・弱)
・ビールの色(淡色・中等色・濃色)
でビアスタイルを9グループに分類し、それぞれの特徴を解説します!

ビアスタイルを香味特徴によりグループ分けして紹介していますので
・ビアスタイルは数が多くて覚えられない…
・似たビアスタイルが複数あり違いが分からない…
という方にも、ビアスタイルについて理解しやすくなるはずです。

まずは、ビールの「苦味」と「色」について解説します。

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ビールの苦味について

ホップ

ビールの苦味は、ビールの原料である「ホップ」に由来します。

ホップは、アサ科カラハナソウ属のつる性多年生植物の一種であり、ビールの原料以外にはあまり使用されない植物です。

ビールの製造にはホップの雌株のみが使用され、「球果」と呼ばれる部位が使用されます。
この球果の中には「ルプリン」と呼ばれる黄色の粒があり、この器官にビールの苦みのもととなる樹脂や精油が含まれています。

ホップにも様々な品種がありますが、香りの種類から大きく三つのタイプに分類されます。
・ファインアロマホップ…香りや苦味が穏やかで上品なホップ
・アロマホップ…香りが豊かなホップ
・ビターホップ…苦味の含有量が多いホップ
これら様々なタイプのホップがあり、どのような品種をどのくらい使用するのか、はビールの特徴に大きく影響します。

また、ホップの使用方法によってもビールの味わいが変わります。

ホップは、基本的に「仕込」の「煮沸」と呼ばれる工程で投入されることが一般的です。
この煮沸工程の開始時にホップを投入することを「ケトルホッピング」と呼び、投入したホップから苦味が十分に引き出されますが、煮沸工程の終了間際にホップを投入することを「レイトホッピング」と呼び、ホップの香りを強く残すことができます。
さらに、「ドライホッピング」と呼ばれる方法では、「仕込」工程の後の「主発酵」の工程で投入することでホップの特徴を強く引き出します。

このように、様々なホップの種類を、様々な方法で使用することで、多種多様なビールが出来上がります。

ビールの色合いについて

malt

ビールの色は、ビールの原料である「麦芽」に由来します。

麦芽とは、大麦や小麦の発芽初期の種子です。

大麦は大きく分けて、穀粒が2列に並んでいる「二条大麦」と、穀粒が6列に並んでいる「六条大麦」がありますが、ビールの製造には「二条大麦」と呼ばれる大麦が使用されます。

ビールの色に影響するのは、この麦芽を製造する際に行う「焙煎」という工程です。
この工程では、ロースターを用いて麦芽を焙煎し、麦芽に色付けを行います。
そうして出来上がった濃色麦芽を、焙煎を行っていない「普通麦芽」とブレンドしてビールの製造を行うことでビールの色を調整します。

苦味の強いビアスタイル(淡色)

インディアン・ペール・エール(IPA)

発祥国:イギリス

力強い苦味とやや高めのアルコールが特徴の上面発酵のビールです。

名前の由来ともなっていますが、18世紀末にイギリスからインドへビールを輸送する際に、劣化防止のため防腐効果の高いホップを大量に使用し、またアルコール度数を上げて造られました。

近年、非常に人気が高まっているビアスタイルでもあります。

アメリカンスタイル・IPA

発祥国:アメリカ

強い苦味と柑橘系を思わせるフルーティーな香りが特徴の上面発酵のビールです。

IPA同様にアルコール度数は6.5%~7.5%と高めになっています。

ドライな味わいがありながら、豊かな香りがあることがアメリカンスタイル・IPAの特徴です。

苦味の強いビアスタイル(中等色)

エクストラ・スペシャル・ビター(ESB)

発祥国:イギリス

後程紹介するペールエールの苦味を強調させた上面発酵のビールです。

麦芽の香味も感じるどっしりとした味わいに、フルーティーなエステル香が感じられます。

強い苦味を持つビアスタイルではIPAが有名ですが、よりどっしりとした味わいが好みの方はESBの方が気に入るかもしれません

ペールエール

発祥国:イギリス

豊かな香りと苦味の強い味わいが特徴のイギリスの伝統的な上面発酵ビールです。

フルーティーな豊かな香りを持ちながらも、苦味の効いたドライな味わいが非常にマッチします。

ピルスナーが下面発酵の代表格であるのに対し、ペールエールは上面発酵の代表格と言えます。

イングリッシュビター

発祥国:イギリス

程よいホップの苦味と香りが人気の上面発酵ビールです。

イギリスのパブで最もよく飲まれているビアスタイルでもあります。

口当たりは軽め、フルーティーな香り、きめ細かい泡、が特徴です。

苦味の強いビアスタイル(濃色)

スタウト

発祥国:アイルランド

ギネスに代表される力強いフルボディの上面発酵の黒ビールです。

黒ビールの苦みは、淡色・中等色とはやや異なり、コーヒーの香りやローストした麦芽の苦みなど、ホップ以外に由来する苦味も合わさったものになります。

スタウトは非常にクリーミーな泡立ちも特徴の一つです。

苦味が中程度のビアスタイル(淡色)

ピルスナー

発祥国:チェコ

明るい黄金色と爽やかな香味が特徴の下面発酵ビールです。

ペールエールが上面発酵の代表格であるのに対し、ピルスナーは下面発酵の代表格と言えます。

日本で飲まれる淡色ビールの多くはこのピルスナーであり、世界中でも最も飲まれているビアスタイルになります。

ケルシュ

発祥国:ドイツ

口当たりはやわらかでありながら、ドライな味わいが特徴の上面発酵ビールです。

同じドイツ発祥で歴史のあるアルト(中等色)と比較されることが多いスタイルです。

ドイツのケルン地方の限られた地域で生産したもののみ名乗ることができます。
シュタンゲと呼ばれる、まっすぐな円柱型のグラスで飲まれます。

セゾンビール

発祥国;ドイツ

スパイスの個性的な風味が特徴の上面発酵ビールです。

農民が夏の畑仕事の合間に飲むために自家醸造していたのが起源と言われています。

個性も様々で、銘柄ごとに多様な味わいを楽しむことができます。

苦味が中程度のビアスタイル(中等色)

アルト

発祥国:ドイツ

ドイツの伝統的な中等色の上面発酵ビール。

同じドイツ発祥で歴史のあるケルシュ(淡色)と比較されることが多いスタイルです。

“アルト”はドイツ語で「古い」という意味で、下面発酵ビールよりも前から造られていることに由来します。

アメリカン・ペールエール

発祥国:アメリカ

アメリカンホップがもたらすフルーティーさが特徴の上面発酵ビールです。

ペールエールはイギリス発祥のビールですが、IPA同様にアメリカンスタイルではフルーティーな香りが特徴となっています。

喉越しや口当たりは爽やかで、程よい苦味があります。

ウィンナービール(ウィンナーラガー)

発祥国:オーストリア

トーストのような香りとほのかな甘み、キレのある後味が特徴の下面発酵ビール。

褐色のウィーン麦芽を使用しており、赤みのある茶色をしているものが多いです。

歴史のあるビアスタイルですが、一時は衰退しており、メキシコで人気に火がついて今でも飲まれるビアスタイルになっています。

デュンケル

発祥国:ドイツ

チョコレートやトーストを感じる香味が特徴の下面発酵ビールです。

明るい茶色から暗い茶色の色をしています。

ドイツのバイエルン地方で造られていますが、中でもミュンヘンで製造されているものは“ミュンヘナー・デュンケル”と呼ばれます。

苦味が中程度のビアスタイル(濃色)

ポーター

発祥国:イギリス

コーヒーを思わせる香りが特徴の上面発酵ビールです。

ブラウンエール、古くなったブラウンエール、ペールエールをブレンドして造られた「エンタイア」というビールがもとになっています。
“ポーター”という名前は、このビアスタイルが“荷役運搬人”に人気だったことに由来するといわれています。

スタウトの前身としても有名です。

シュバルツ

発祥国:ドイツ

ドイツの黒ビールを代表する下面発酵のビアスタイルで、“シュバルツ”はドイツ語で「黒」の意味です。

焙煎した麦芽の風味が特徴で、チョコレートやコーヒーを思わせる香味があります。

黒ビールのスタウトとポーターとの違いは産地の他に「下面発酵である」という点が大きく違います。
そのため、黒ビールでありながら下面発酵らしいキレの良い味わいを楽しむことができます。

ドイツの詩人ゲーテが愛したお酒としても有名です。

苦味の弱いビアスタイル(淡色)

ヴァイツェン

発祥国:ドイツ

苦味が少なく、バナナを思わせるフルーティーな味わいが特徴の上面発酵ビールです。

“ヴァイツェン”とはドイツ語で「小麦」の意味であり、原料の50%以上を小麦麦芽としています。

ベルジャンホワイトと同様に、ビールが苦手な方にもおススメできるスタイルです。

ろ過をせず酵母を残したものを“ヘーフェヴァイツェン”と呼びます。

ベルジャンホワイト

発祥国:ベルギー

コリアンダーのスパイシーさとオレンジピールの柑橘の香りが特徴の、甘く爽やかな上面発酵ビールです。

大麦麦芽の他に、麦芽にしない小麦を使用するのが特徴です。

その名の通り淡い色が特徴的で、不透明に白く濁ります。

ヴァイツェンと同様に、ビールが苦手な方にもおススメできるスタイルです。

“ホワイトエール”、“ホワイトビール”などとも呼ばれます。

ミュンヘナーへレス

発祥国:ドイツ

麦芽の香味を感じる苦味の少ない下面発酵ビールです。

同じドイツの淡色ビール“ヴァイツェン”との違いは、「下面発酵であること」であり、比較的爽やかな味わいが特徴です。

下面発酵ビールの代表格的存在“ピルスナー”に対抗して造られたといわれています。

苦くはなくてさっぱりしたものが好きな方に特におススメ。

アメリカンラガー

発祥国:アメリカ

口当たり、喉越し、とにかくライトであることが特徴の下面発酵ビール。

ホップの苦味や香りは控えめでありながら、炭酸が強いため、とても爽やかに感じます。

透明な瓶とライムが印象的な“コロナ”が有名。

苦味の弱いビアスタイル(中等色)

バーレイワイン

発祥国:イングランド

高いアルコール度数、重厚感のある味わい、豊かな甘味が特徴の上面発酵ビールです。

フルーティーなエステル香も合わさり非常に複雑な味わいになっています。

半年~数年という長期の熟成の熟成期間を経て造られることも特徴です。

ビール=ピルスナーと思って飲むと「ビールじゃない」と言ってしまうでしょう。

イングリッシュスタイル・ブラウンエール

発祥国:イギリス

ロースト麦芽が程よく香る、苦味の弱めな上面発酵ビールです。

同じくイギリス発祥のペールエールと比べると、非常に優しい飲み口になっています。

イングリッシュスタイル・ブラウンエールの中でも、ドライなものからコクのあるものまで様々な味わいの銘柄が存在します。

アイリッシュエール

発祥国:アイルランド

カラメル麦芽に由来する、甘い香りが特徴の上面発酵ビールです。

アルコール度数も4%台と高くなく、ホップの苦味も抑えられているため、マイルドな飲み口になっています。

赤みのある茶色の見た目から、“レッドエール”とも呼ばれます。

苦味の弱いビアスタイル(濃色)

ラオホ

発祥国:ドイツ

“ラオホ”とは「煙」の意味で、燻製した麦芽で造られるスモークビールです。

飲み口はスムースでありながら、スモーキーな香りが個性的なビールです。

色は濃色のものが多いですが、中等色~濃色と様々なものがあります。

ボック

発祥国:ドイツ

アルコール度数の高さ、重厚な麦芽の香味が特徴の下面発酵ビールです。

“ボック”とは「雄ヤギ」の意味であり、力強さや飲んだ後に雄ヤギのように元気になる、ということから名づけられたといわれています。

色は濃色のものが多いですが、中等色~濃色と様々なものがあります。

さいごに

この記事では代表的なビアスタイルについて
苦味:強・中・弱
色:淡色・中等色・濃色
の組み合わせで9グループに分けて紹介しました。

ビールには、ここで紹介したスタイル以外にも様々なものがありますので、別の記事で紹介していきたいと思います。

なお、ビールの定義や製造方法について知りたいかたはこちらの記事をご覧ください。

ビールの雑学として「生ビールとは何か…」については、こちらの記事で解説しています。