生ビールは製造方法で決まる!瓶・缶・樽、ラガー・エールとの関係も解説!

こんばんは。
居酒屋での樽生ビールが恋しく、ビールサーバーを買ってしまおうか迷っている猫田です。

コロナ禍が落ち着き、飲み会をひらくことができるようになると、ほぼ確実に…
「やっぱり生ビールがうまい!」
と話す、上司や友人が出現すると思います。

さて、その「生ビール」の使い方はあっているのでしょうか。
あなたは正しく説明することができますか?

この記事では、
・生ビールとは何か
・生ビールと缶、瓶、樽の関係
・生ビールとラガー、エールの関係
について、よくある疑問や誤解を解消すべく、わかりやすく解説していきます。

生ビールとは

生ビールの写真

結論は
「生ビールとは、非熱処理ビールである」
です!

以上です。

…はい、ちゃんと解説します。

生ビールかどうかはビールの製造方法によって決まります。
ビールの製造方法はこちらの記事で解説しています。

ビールの製造方法をとてもざっくり説明すると、
1. 仕込
2. 発酵
3. 貯酒
4. ろ過
5. 充填
となりますが、この「4.ろ過」が今回のポイントです。

「ろ過」と書いているこの工程の目的は「酵母を含む微生物の生命活動を止めること」です。
その手段として珪藻土や人工的なフィルターをろ材としたろ過が行われているのです。

この工程に、熱を使わずろ過だけ行うことによって「生ビール」を名乗ることができるのです。
一方、「熱処理」を行ったビールは「熱処理ビール」と呼ばれます。

「生ビール」が誕生したのは1967年で、それより前は「熱処理」により殺菌されたビールが販売されていました。

熱処理を行う工程は、「パストリゼーション」と呼ばれます。

瓶や缶などに詰めたビールを容器ごと殺菌する方法は「トンネル・パストリゼーション」と呼ばれ、60℃以上で20分程度保持されます。

一方、容器に詰める前のビールを殺菌する方法は「フラッシュ・パストリゼーション」と呼ばれ、70℃で20~60秒程度という短い時間で殺菌されます。
ただしこの方法では、瓶や缶などの容器をあらかじめ殺菌し、無菌状態でビールを充填する必要があります。

熱処理を行う代わりに「精密ろ過」を行うことで「生」を名乗ることができます。

この精密ろ過にはフィルターが使用され、1マイクロメートル以下の孔があいたものが一般的に使用されます。
ただし、ろ過膜の孔の大きさはすべて均一ではなく、少ない割合ですが大きい孔が空いているものであるため、十分な品質を保つ生ビールを製造するにはろ過だけではなく、その前の製造工程で菌数を極力少なくしておく必要があります。

少し細かな内容になってしまいましたが「生ビール」とは「非熱処理ビール」であり、居酒屋で飲む樽からジョッキに注がれたビールだけが生ビールなのではなく、

・缶の生ビール(非熱処理ビール)
・缶の熱処理ビール
・瓶の生ビール(非熱処理ビール)
・瓶の熱処理ビール
・樽の生ビール(非熱処理ビール)
・樽の熱処理ビール
全て存在しうるということです。

(樽の熱処理ビールは、銘柄が少ないことから、もしかしたら現在存在しないかもしれません。ただし理論上は全く問題ありません。)

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缶・樽・瓶ビールはなにが違う?

缶、瓶、樽(ジョッキ)のビール

先ほど、生ビールには缶・樽・瓶の形態は関係しないことを説明しました。

では、それぞれにどのような違いがある(またはない)のでしょうか。
以下に解説していきます。

中味液の違い

まず、中味の液(ビール)に違いはありません!
同じビールが異なる容器に充填されて出荷されます。

居酒屋でジョッキにつがれたビールは美味しい、瓶ビールは味が悪い…など感じたことがあるかもしれませんが、その違いは「気のせい」または「他の要因からくる違い」によるものです。
他の要因は以下で解説します。

生じる味の違いの原因

では、缶・瓶・樽によって違いを感じることがあるのはなぜでしょう。
まず、容器に関わらず保存状態や保存期間によって中味液の劣化は生じるため、それによる味の違いがうまれます。

また、その日の体調やまわりの雰囲気などから味の違いを感じることがあります。

ここで缶・瓶・樽の違いを語るうえで、「保存状態」が一点目のポイントになります。

いずれも適切な保存をして、適切な期間のうちに飲めばこの違いは生じませんが、適切な保存方法が最も難しいのが瓶ビールなのです。

瓶ビールの保存を難しくするのは「日光」です。

ビールは日光にさらされていると、スカンクが発生する臭いに例えられる「日光臭」が発生します。
これは、ビールの原料であるホップに由来する苦味成分の一部が分解されることによって生じます。

ビールの原料についてはこちらの記事をご覧ください。

これを防ぐために、茶色の瓶が主に使われていますが完全ではなく、缶や樽など完全に遮光されるものとは違い、日光臭が発生するリスクが高いのが瓶ビールなのです。

缶・瓶・樽の味の違いを生じさせる二点目のポイントは「泡」です。

これは樽のビールで有利に働くことが多いです。

樽ビールはサーバーを使いジョッキなどに注がれますが、サーバーでは泡を発生させる機能があります。
それによって、きめ細かい泡がのったビールが出来上がります。

ビールの泡は液体に蓋をすることで、香りの揮散を防ぐ、酸化を防ぐ、といった役割を果たします。
これによって美味しい状態で味わい続けることができるのです。
サーバーでつがれたビールはこの特徴が最も顕著に出るため、樽ビールで有利に働くポイントと言えるでしょう。

それ以外に味を大きく左右する要因はないといえます。

細かな味の違いを感じ取ることができる人であれば、他の様々な違いを感じるかもしれませんが、官能検査の訓練をうけて経験を積んだ人でもなかなか難しいでしょう。

あれっ?ラガービールって何?

様々なビールの画像

前述した「樽ビール=生ビール」と考えてしまう勘違いの次(くらい)に多い勘違いとして、「生ビールの対義語はラガービール」です。

これは誤りです!

生ビールの対義語は熱処理ビール
ラガービールの対義語はエールビール
なのです。

※厳密には対義語ではないのですが、同列の比較対象という意味で使っています。

生ビールと熱処理ビールの違いは前述の通りです。

一方、ラガービールとエールビールの違いは「発酵方法」です。

ラガービールとは、「下面発酵ビール」の総称です。
下面酵母と呼ばれる酵母を使い、発酵中に酵母が沈んでいくこと、低温の発酵温度(10℃前後)、7日程度という長めの発酵期間、すっきりとした味わい、が特徴です。
もともとは冬の期間を貯蔵期間としていたことから「貯蔵」という意味のラガーという名前がつけられました。

一方、エールビールとは、「上面発酵ビール」の総称です。
上面酵母と呼ばれる酵母を使い、発酵中に酵母が液面へと浮かぶこと、比較的高温の発酵温度(15℃前後)、3~4日という短期間の発酵期間、フルーティーな味わい、などが上面発酵の特徴です。

この発酵の違いをしっかり説明しようとすると非常に長くなるので、また別の記事で解説します。

ラガービールについて話を戻しまして…
生ビールの対義語はラガービールという勘違いが多いのには理由があります。

まず、国内で販売されている大手ビールメーカーのビールの銘柄は多数ありますが、生ビールが主流であり、熱処理ビールはかなり種類が少ないというのが現状です。

その数少ない熱処理ビールの代表的な銘柄は、
・クラシックラガー(キリンビール)
・サッポロラガービール(サッポロ)
です。

…ら、らがー

これが紛らわしい理由です!!!

何度も言いますが、

ラガービールは「下面発酵ビール」です。
生ビールは「非熱処理ビール」です。

「熱処理ビール」に「ラガー」という名前がつけられる理由は特になく、偶然だとは思いますが、今では数少ない熱処理ビールの銘柄に「ラガー」という名前がついていることが、勘違い生む原因といえるでしょう。

※ちなみに、キリンラガーという銘柄がありこれは非熱処理(生ビール)です。

まとめ

生ビールとは、「非熱処理ビール」。
生ビールと対になるものは「熱処理ビール」。

生ビールには、缶・瓶・樽などの容器の種類は関係ない。
缶・瓶・樽ビールの中味は同じだが、保存状態や泡立ちの違いから味の違いが生じる。

生ビールには、ラガーとエールは関係ない。
ラガービールとは、下面発酵ビール。
エールビールとは、上面発酵ビール。

熱処理ビールも美味しい。

ビールの定義、原料、製造方法、種類についてはこちらの記事で解説しています!

ビールを趣味にできるビールの定期便サービスはこちらの記事で紹介しています。