【お酒の種類】複雑なお酒の分類をわかりやすく解説!

こんばんは。
元お酒メーカ製造部勤務、今はお酒を飲む担当、猫田です。

お酒っていろんな種類がありますよね。
しかし、お酒って真面目に学ぶ機会もないので正直よくわからない状態になっていませんか?
お酒の話を聞くのもたいていお酒の席だったりするので忘れてしまう、ということもあるかもしれません。

この記事では、
・お酒の違いが分からない
・スピリッツ…醸造酒…とは何か説明できない
・お酒について調べなきゃいけないが、まず一歩目が分からない
といった方に、「お酒の種類」についてまずはこれだけ知っておいてほしいことを、わかりやすく解説していきます。

何かの参考になれば幸いです。

お酒の種類

お酒の種類

お酒はその製造方法により大きく三つに分類されます。

醸造酒
蒸留酒
混成酒

ちなみに、基本的には今紹介した3つに分類することが多いのですが、酒税法では以下の4つに大別されます。
「発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類」

基本的な分類の「醸造酒」が、ビールなどを対象とする発泡酒類と、その他日本酒や果実酒など含む醸造酒類に分けられている点が違いです。
リンク:酒税法第三条(その他の用語の定義)第一号~第六号

では、一つずつ解説していきます。

醸造酒とは

醸造酒(日本酒)の画像

醸造酒とは、
”原料を酵母によりアルコール発酵させた飲料のうち、蒸留などの工程(後述)を経ずに飲まれるもの”
をいいます。

蒸留を行わないことから、醸造酒はアルコール度数は低いものがほとんどです。

酵母のアルコール発酵により、アルコールが生まれるのですが、ご存知の通りアルコールには殺菌作用があります。そのため、酵母自身が高いアルコール度数の環境下で生命活動を行うことができず、醸造のみで製造する場合、アルコール度数に限度があります。

酵母の種類や細かな製造方法の違いによっても異なりますが、16~20%程度が醸造により製造できるアルコール度数の限界と言えるでしょう。

また、アルコール度数が低く、糖分などの成分が残っているものも多いため、長期間の保存はできないものが多いというのも特徴です。

この醸造酒はさらに細分化されます。
その原料に「糖分」を含むか「でんぷん」を含むか、によって製造工程が変わり、お酒としての種類も分かれます。

単発酵酒

原料が「糖分」を含む場合、酵母は原料に含まれる糖分をそのまま利用してアルコール発酵を行います。

発酵酒の定義は、
”醸造酒のうち原料に糖を含み糖化工程が不要なもの”

です。

「糖化工程」とはでんぷんを酵母が食べられるように糖に分解する工程。
詳しくは、次の複発酵酒の解説で説明します。

例)ワイン、シードル

複発酵酒

原料に「でんぷん」を含む場合、糖に分解する必要があります。
でんぷんは多数の糖が鎖状に連なった高分子化合物です。

アルコール発酵では、酵母は糖を「資化」(分解)してアルコールと二酸化炭素を生成しますが、資化できる糖のサイズには限度があります。そのサイズは酵母の種類によって異なりますが、せいぜい数個程度の糖が限界です。

そのため、でんぷんを酵母が資化できるサイズまで分解してあげる必要があり、その工程を「糖化工程」と呼びます。

”醸造酒のうち原料を糖化する必要があるもの”
これが複発酵酒の定義です。

複発酵酒は発酵を行うタイミングによって、さらに二つに分けられます。

単行複発酵

でんぷんを糖化した「後に」アルコール発酵を行う。
例)ビール

並行複発酵

でんぷんの糖化とアルコール発酵を「同時に」進行する。
例)日本酒、紹興酒、マッコリ

少し込み入ってきましたね。

醸造酒>単発酵酒
または
醸造酒>複発酵酒(単行複発酵 or 並行複発酵)

という構造です。

蒸留酒とは

蒸留酒(ラム)の画像

蒸留酒とは、
”醸造酒を蒸留して造ったお酒”
です。

“スピリッツ”とも呼ばれます。

 例)ジンウォッカテキーラウイスキー

蒸留とは…
“液体を一度蒸発させた後に凝縮させることで、沸点の違いによって成分を分離・濃縮する方法”
です。

醸造酒の製造では、上述の通り、アルコール発酵を行う酵母がアルコール存在下の環境に耐えられずアルコール16~20%程度が限界になります。

これ以上にアルコール度数を上げるには「蒸留」という技術が必要になり、沸点の違い(エタノール78℃、水100℃)を利用してアルコール度数を上げていきます。

したがって、蒸留を行うことによるアルコール度数の高さが蒸留酒の特徴ともいえるでしょう。

少し余談。

蒸留を行うため、アルコール度数が高いという特徴を持つ蒸留酒。
アルコール度数の高い蒸留酒は冷凍庫に入れても凍りません!

蒸留酒だから、というよりはアルコール度数が高いから、というほうが正確です。

水の凝固点(凍る温度)が0℃に対し、エタノールの凝固点はー114.5℃。

「水だけ凍るのでは…?」と考えた人もいるかもしれませんが、エタノール中のアルコール分子が水分子と結合しやすく、水分子同士の結合を阻害するため、お酒全体の凝固点は0℃以下になります。

アルコール度数20%の場合、凝固点はー11℃。
アルコール度数40%の場合、凝固点はー31℃。

それに対し、一般の家庭用冷凍庫はー18℃程度。

蒸留酒であってもアルコール度数に違いはありますが、40%程度のものが多いです。

したがって一般の家庭用冷凍庫であれば多くの蒸留酒は凍らない、のです。
逆に、ほとんどの醸造酒はアルコール度数が20%以下のため凍る、ということになります。

お酒本来の味を感じてみたい方にはストレート(そのまま)で飲むことがおすすめなのですが、常温で飲むとアルコール感が強すぎるなど飲みにくいのも事実…そこで、冷凍庫でキンキンに冷やしておくと、香りも強すぎず、口当たりもトロトロになって、飲みやすくなりますよ!

混成酒とは

混成酒(リキュール)の画像

混成酒とは、
醸造酒や蒸留酒を原料にして、果実や薬草、香辛料、甘味料、香料などの成分を配合したお酒”
です。

ちなみに、混成酒=リキュールと紹介されることがありますがそれは誤りです。
リキュールは混成酒のうちのひとつ、蒸留酒をベースにしてつくられたものです。

醸造酒ベース

そのままですが、醸造酒に果実や香草、香辛料、甘味料、香料などを漬け込み、成分を抽出したお酒です。

厳密な名前の定義はなく、「その他の混成酒」やそのまま「ワイン」と呼ばれることが多いです。

例)ベルモット、サングリア

蒸留酒ベース

こちらもそのままですが、蒸留酒に果実や香草、香辛料、甘味料、香料を漬け込み、成分を抽出したお酒です。

原料によって、ユニークなお酒ができるため、非常に多くの種類があることが特徴です。
また、醸造酒ベースと比べ、ベースとなるお酒の特徴が比較的出にくく、使用する原料の特徴をうまく引き出すことができるという点も特徴です。

例)リキュール

まとめ!

お酒は、醸造酒・蒸留酒・混成酒、に大別される。

醸造酒は原料を酵母によってアルコール発酵させたお酒。
蒸留酒は醸造酒を蒸留して、アルコール濃度を高めたお酒。
混成酒は醸造酒や蒸留酒に、いろんな物質を漬け込んだり混ぜたりしたお酒。

どれも美味しい。