【ビールとは…】ビールの定義・原料・製造方法・分類を一挙解説!

こんばんは。
昔はお酒を造る人、今はお酒を飲む人、猫田です。

飲み会で必ずと言っていいほど目に、口にするビール…
もしあなたがビールを好きなら、「ビールとは何か」という問いに答えられますか?

この記事では、「ビール」について
・ビールの法律上の定義
・ビールの原料
・ビールの製造方法
・ビールの分類
についてわかりやすく解説していきます。

猫田:健康第一。お酒は適度に。

ビールの定義

一般的な定義

まずは一般的な定義から。

ビールとは
“主に大麦を発芽させた麦芽やホップを原料として、ビール酵母を用いてアルコール発酵をさせたアルコール飲料”
です。

日本では、金色・白い泡・苦い・喉越しを味わう…というイメージがあるビールですが、世界に目を向けると(近年では日本国内でも)様々なスタイルのビールがあります。

いきなり「ビールとは何か」の答えをあいまいにしてしまいました。
様々なスタイルのビールについては後程解説するとして、話をビールの定義に戻して、もう少し厳密な定義について解説していきます。

伝統的な定義(ビール純粋令)

「ビールの定義」として最も有名で伝統的なものはドイツのビール純粋令です。

ビール純粋令とはビールの原料を制限した法律であり、
”ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし”
と定められています。

この法律が定められたのは1516年のバイエルン公国で、食品の品質保証の法律として世界最古の一つと言われています。
ビール純粋令はビールの一つの定義として考えられていますが、先に述べた通り今では様々なスタイルのビールがあり、純粋令に背くからといって劣っているものではありません。

日本におけるビールの定義(酒税法)

日本におけるビールの定義は酒税法で定められています。


少し長いので要約すると、
“麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたアルコール濃度20%未満の飲料。
その他の原料は政令で定めるものに限り許されるが、麦芽の比率が50%以上であること。”

この定義に外れると「発泡酒」や、「その他の醸造酒」または「リキュール」に該当します。
(このあたりはかなり複雑で話が長くなってしまうので、また別の記事で…)

原文はリンク先をご確認ください。
酒税法第3条第12号

では次に、ビールの原料と製造方法について解説していきます。

ビールの原料

原料は、麦芽・ホップ・水・酵母・副原料の5つです。
以下で詳しく見ていきます。

麦芽

大麦麦芽

麦芽は、大麦や小麦の種子が発芽して少し根が出た段階で乾燥させたものです。

大麦には穀粒が二列に並んでいる二条大麦と、六列に並んでいる六条大麦がありますが、ビールで用いられるのはほぼ「二条大麦」です。
二条大麦は、六条大麦に比べ、デンプン含有量が多く、タンパク質が少ないという特徴があり、さらにデンプンを糖に分解する酵素の含有量も多いという特徴もあることから、ビール造りに適しているとされています。

アルコール発酵を行うために、麦芽が持つでんぷんからできる糖が必要で、でんぷんから糖に分解する反応には麦芽が持つ酵素が必要…。という具合に、麦芽はビール造りになくてはならない存在なのです。

ホップ

ホップの画像

ホップはアサ科カラハナソウ属のつる性の多年生植物の一種です。

ビール製造には、ホップの雌株の「球果」と呼ばれる花を使い、ビール特有の苦みと爽快な香りのもととなります。
球果の中に「ルプリン」と呼ばれる黄色の粒が含まれ、この中に苦みの成分が凝縮されています。ルプリンを手でつぶすと、べたべたするとともに強烈なにおいが手についてしまうのでご注意を…


ビールにはホップが必須であり、ホップの使い道もビールがほとんど…というように、ホップとビールは互いに切っても切れない仲と言えます。

水の画像

ビールの原料として忘れてはいけないのが「水」です。

ビールの製造には大量の水を使い、ビールの成分でも9割以上を占めています。
基本的には飲料水と同様ですが、ミネラルなどを調整した「醸造用水」と呼ばれる水を使います。
ビールのスタイルによって求められる水質は異なり、硬度によっても出来上がるビールが大きく変わります。

酵母

酵母を原料に含めるかは議論が分かれます。…というより、厳密にいうと原料には含まれません。なぜなら多くのスタイルのビールでは最終的にろ過を行い、酵母が除去された状態で出荷されるからです。
ですが、お酒の成分であるアルコールをつくるのが酵母であり、とても重要な役割を果たしています。

ビール醸造に用いられる酵母は、Saccharomyces cerevisiaeという球形の真菌類です。
「出芽酵母」や「パン酵母」と呼ばれることもあり、ビールのほかにパンやワイン、日本酒などの製造にも利用される微生物です。

「cerevisiae」という言葉は、「Cerevisia」(ラテン語でビールの意味)に由来することからわかるように、ビールと酵母は深い関係にあるといえます。

副原料

先に述べた「ビール純粋令」では認められませんが、日本を含むドイツ以外の国では麦芽の他に様々なでんぷん質の副原料が使われています。
代表的なものには麦(麦芽にしていないもの)、米、トウモロコシ(コーングリッツ、コーンスターチ)などが使われています。副原料を使用することで、純粋に糖分を補給することができ、すっきりとした味に仕上がります。

ビールの製造方法

ビール製造の設備

ビールの製造方法は、製麦・仕込・発酵・貯酒・ろ過・充填の工程に分けられます。
以下で概要を説明していきます。

製麦

原料である大麦(または小麦)を麦芽にする工程です。

大麦を水につけて発芽させ、少し芽が出た段階で熱(熱風)をかけることにより成長を止めます。
これにより、大麦中のデンプンを糖に、タンパク質をアミノ酸に、分解する酵素が生成された状態を保持し、次工程の仕込で利用できるようにします。

仕込

麦芽、ホップ、副原料などの原料を煮込んだりろ過したりすることにより、甘くて苦い「麦汁」を作る工程です。

仕込の中の「糖化」という工程では、原料の麦芽に含まれるデンプンを、麦芽に含まれる酵素で分解し、糖を得ます。また、タンパク質を分解してアミノ酸にすることで酵母の栄養素となります。

その後、麦芽の穀皮などを含む固形分を取り除いた後に「煮沸」を行います。この工程でホップを入れて、煮詰めることでホップの苦みを抽出し、また特有の香りをつけていきます。

ホップを入れたことにより、再度固形分が生じるため固形分を沈殿させて取り除きます。
その後、冷却を行って次工程の発酵を行う準備をします。

発酵

仕込工程でできた麦汁に酵母を加えて温度の管理を行い、アルコール発酵をさせることにより、糖からアルコールと炭酸ガスをつくる工程です。

ビールの種類にもよりますが、上面発酵のビールでは3~4日程度、下面発酵のビールでは7日程度の期間が目安になります。

この工程で、いわゆる「お酒」になります。発酵が終わったビールは「若ビール」と呼ばれます。

貯酒

発酵を終えた「若ビール」はまだまだ美味しいとは言えない状態です。
この若ビールを、低温で保管し、不快な物質を揮発させ、炭酸ガスを溶け込ませる工程が貯酒工程です。

この期間はメーカーごと、銘柄ごとに違いがありますが、1ヶ月程度の貯酒期間が一般的です。

ろ過

酵母が含まれ濁っているビールを、透きとおった状態にする工程が「ろ過」です。

ろ過の方法は様々ですが、珪藻土によるろ過、フィルターによるろ過が主流です。
珪藻土とは、海や湖に生息している珪藻の化石で、細かな孔が空いている形状から様々な食品製造のろ過で用いられます。

酵母を除去することで発酵を止め、見た目もクリアな状態にするほか、その他微生物を製品に持ち込まないために除去する、品質保証で重要な役割も担います。

充填

これまでタンクに入っていたビールを出荷するために「瓶」「缶」「樽」などの容器に詰める工程です。
ここではいかに酸素を持ち込まないようにするかや、微生物を持ち込まないようにするか、など細心の注意が払われます。

ビールの分類

ビールには様々な種類(スタイル)があります。
この詳細は別の記事で紹介するとして、以下では最も大きな分類である「上面・下面発酵」について説明していきます。
この分類は酵母の性質・発酵の特徴によるもので、「上面酵母」「下面酵母」というものがあります。
(以下には自然発酵も記載しています。)

上面発酵

「エール」と呼ばれます。
名前の通り上面酵母を使用して製造され、その酵母は発酵により酵母が液の上側に集まります。
上面発酵のビールは、香りが豊かで、味もしっかりとしている特徴があります。
ゆっくりと味わう飲み方が適しているといえます。


例)ケルシュ、アルト、ヴァイツェン、ポーター、スタウト、ベルギーホワイト

下面発酵

「ラガー」と呼ばれます。
名前の通り下面酵母を使用して製造され、その酵母は発酵工程で液の下側に集まります。
下面発酵のビールは、爽快で飲みやすいものが多いのが特徴で、日本における一般的なのど越しを味わうようなビールはこれにあたります。


例)ピルスナー、アメリカンラガー、ミュンヘナーへレス、シュバルツ、ボック

自然発酵

主にベルギーで採用されているビールで、醸造所の空気中に漂う野生酵母を使用して発酵させるビールです。

例)ランビック

詳細な情報は非常に数が多いので別の記事で紹介していきます。

また、勘違いされやすい「生ビール」の定義についてはこちらの記事で解説していますので是非ご覧ください!

まとめ

ビールは、大麦、ホップ、水(その他副原料)を原料にした醸造酒。
製造工程は、仕込→発酵→貯酒→ろ過→充填。
種類は様々だが、使用する酵母の特徴により上面発酵・下面発酵・自然発酵に大別される。

色々なクラフトビールを楽しむことができる、ビールのサブスクリプションサービスはこちらの記事で紹介しています。興味のある方は是非ご覧ください。