こんばんは。
元酒類メーカー製造部門勤務、お酒を飲むのが大好きな猫田です。
この記事では、
・お酒の定義は?
・お酒の成分は?
・エタノールとは?
・お酒はどのようにつくられるのか?
という疑問に対してわかりやすく、かつ真面目に解説していきます。
お酒関係の仕事に就いた方、お酒が趣味の方、お酒を初めて飲む方…
にぜひ読んでいただきたいです!
この記事が、あなたが自信をもってお酒について語れる第一歩となれたら幸いです。
猫田:飲みすぎ注意。たしなむ程度に楽しんで。
お酒とは何か
その答えは一言でいうと、
“エタノールを含む飲料の総称”
です。
ただし、これだけでは面白味もないので、
・法律上の定義
・エタノールについて
・お酒の製造方法
について説明していきます!
法律上の定義
日本におけるお酒の定義は「酒税法」という法律で定められています。
酒税法とは酒税の徴収や、酒類の製造・販売免許などについて定めた法律です。
その酒税法の中で
“「酒類」とは、アルコール分1度以上の飲料”
とされています。
つまり、アルコール1%未満の飲料は法律上お酒ではないのです。
注意:飲酒運転とは話が別です。
飲酒運転は、血中または呼気のアルコール濃度(酒気帯び運転)または、正常な状態かどうか(酒酔い運転)によって判定されます。アルコール1%未満の飲料を飲んだ場合でも該当することがあります。
ちなみに、アルコール濃度(アルコール分)についても以下の通り厳密に定められています。
”温度15度の時において原容量100分中に含有するエチルアルコールの容量をいう”
(酒税法第三条第一号)
酒類の分析において、温度15度がスタンダードであり、各種測定をする際には対象の液体を15℃に調整して測定することが必要です。
これは余談ですが、酒税法において頻繁に登場する「酒類」という言葉について、明確な読み方の決まりはありませんが、「種類」と混同しないよう「酒類(さけるい)」と読むのが一般的です。
酒税法の原文を確認したい方は、以下のリンクをご覧ください。
まずは「酒とは何か」について説明してきました。
では、お酒に含まれている「エタノール」とは何でしょう。
消毒用アルコール、アルコールランプのアルコール、との違いも含めて解説していきます。
エタノールについて
アルコールとは
まずアルコールとは…
“炭化水素の水素原子を、ヒドロキシ基(-OH)で置き換えた物質の総称”
です。
炭化水素とは“炭素原子(C)と水素原子(H)のみでできた化学物質の総称”です。
噛み砕いて言ってしまうと、アルコールとは”CとHが連なって端にOHがついている物質”です。
エタノールとは
まず初めに、アルコールの一種がエタノールです。
エタノールとは…
“エチル基(CH3CH2-)にヒドロキシ基(-OH)が結合した物質”
です。
より端的に言うと
“CH3CH2OH”
です。
エチルアルコールなどとも呼ばれます。
用途は非常に広く、飲用(お酒)の他に実験や消毒にも用いられており、飲料用のエタノールはエタノール全体の使用量の8%程度となっています。
次に、よく間違われやすいものについて2点ほど説明します。
間違われやすいもの
・メタノール
間違えられやすい物質としてメタノールがあります。
これは名前は似ているものの、まったく違う物質です。
まずは定義から。
メタノールとは…
“メチル基(CH3-)にヒドロキシ基(-OH)が結合した物質”
“CH3OH”
です。
メチルアルコールなどとも呼ばれます。
主な使用例としてアルコールランプなどの燃料に用いられます。
このメタノールはエタノールと構造が似ているものの性質は全く異なるので注意が必要です。
メタノールは人体に有害で、主に視神経に障害を与え、吸入や誤飲により死に至ることもあり、劇物に指定されています。
(飲んではいけません!!)
・消毒用エタノール
では、お酒のエタノールと消毒用エタノールとは何でしょうか。
基本的に物質としてのエタノールとして違いはありません。
ただし、飲用以外のエタノールを飲むことは絶対にやめておきましょう。
飲用または医薬品用以外のエタノールには、「変性アルコール」と呼ばれるものであり、多くの場合、エタノールの他にメタノールやイソプロパノールなどのアルコール類が混入されています。
また、物質としては同じですが飲用・工業用エタノールの両者に違いの一つとして、製造方法があります。
お酒は酵母などの微生物を使い、アルコール発酵によってつくられます。
消毒用エタノールにはエチレンを原料に化学合成によってつくられます。
ここがお酒の奥深いところとも言えます。
通常の飲料は、いろいろな原料を「混ぜて」つくることが一般的ですが、お酒に関しては微生物の生命活動を利用して造られるため、その製造は非常に難しく、面白いといえます。
ここまでお酒やエタノールとは何かを説明してきました。
最後にお酒のつくり方を簡単に見ていきましょう!
お酒のつくりかた
お酒の造り方はお酒の種類によって様々ですが、共通する工程に「アルコール発酵」があります。
アルコール発酵とは、酵母が糖を分解してエタノールと二酸化炭素を生成しエネルギーを得る反応です。
糖にはグルコースやショ糖など、様々な物質があり、お酒の製造では穀物(でんぷんを含むので糖に分解する必要がある。)や果物(ブドウなど)から糖を含む液体を作ります。
そこでできた糖を含む液体に酵母を加えて、温度など適切な条件下におくことで、酵母がアルコール発酵を行い、エタノールと二酸化炭素を生成します。
これがいわゆる”お酒ができる瞬間”なのです。
酵母とは、Saccharomyces cerevisiaeという球形の真菌類です。
「出芽酵母」や「パン酵母」と呼ばれることもあり、お酒の製造の他にも、パンの製造にも利用される、現在の生活になくてはならない微生物です。
つまり…
“穀物や果実などを原料に糖を含む液体をつくり、酵母を加えてアルコール発酵させる”
というのがお酒をつくる工程(の根幹)になります。
実際の製造方法は様々で、
・糖を含む液体にするため、穀物に含まれるでんぷんを糖にする
・発酵したお酒を蒸留してアルコール濃度を高める
など種類に応じた作り方があります。
以下の記事では、各お酒の定義や原料、製造方法、代表銘柄を解説していますので是非ご覧ください。
・ビールの製造方法
・ジンの製造方法
・ウォッカの製造方法
・ラムの製造方法
・テキーラの製造方法
・ウイスキーの製造方法
・ワインの製造方法
・日本酒の製造方法
まとめ
お酒とは…
”1%以上のエタノールを含む飲料”
エタノールとは…
”CH3CH2OHの構造を持つアルコール”
エタノールはアルコールランプに用いられるメタノールとは異なる物質だが、消毒用エタノールとは同じ物質。
お酒に含まれるエタノールは酵母という微生物のアルコール発酵により生成される。
お酒造りは奥深い…